2006年 08月 19日
こんなものを聴いた3
 さて、調子に乗ってもう一ついきましょう。Joan of Arc~Red Krayolaときたら、僕の中ではコレ。Maher Shalal Hash Baz(マヘル・シャラル・ハシュ・バズ/以下マヘル)。日本を代表する(というかやってる本人は代表するなんていう概念自体無いでしょうが)、サイケ(?)・ユニット(?)。ていうか、ジャンルは何と言えばいいんでしょうね? ちょっとググッてみると、分類は「サイケデリック」「ストレンジ・ポップ」「ロウファイ」などなどありますが、どれもしっくりこないですね。ともかく、僕の中では先述のRed Krayolaに一番近いのがマヘルなのです。

 80年代からアンダーグラウンド・シーンでは伝説になっているシェシズなどで活動をしていた工藤冬里という人がリーダー。僕は80年代の日本のアンダーグラウンド・シーンについて余り詳しくないので、ここではその辺の経歴は省きます。一応、資料的に何枚かは持ってますが、どうもあんまり入れ込めませんでしたので、、。あと、陶芸家でもあるそうです。四国在住。

b0054702_127642.jpg 僕は、確かずっと前の米国音楽か何かにマヘルの記事が載っていて、それで名前だけは知っていたのですが、きちんと音を聴いたのは割に最近。00年に、大好きなパステルズがジオグラフィックという自主レーベルを作った際に最初にリリースした"from A Summer to Another Summer"というベストアルバムです。話では、マヘルをリリースするために彼らは、ジオグラフィックを作ったとも。なので、やはり最初のイメージとしては、パステルズと近いものを感じました。今にも崩れ落ちてしまいそうな演奏に、ヘロヘロの唄が乗るという感じ。ユーフォニウムや笛や打楽器が牧歌的なメロディを奏で、まるで町内の楽団のような趣。工藤さんの唄も、子供のようなたどたどしさ。
 しかし、聴いているとそんな可愛らしい感じはしなくなっていくのです。なんというか、頭がクラクラしてきます。明らかに頭のネジをグラグラにする確信的な音。パステルズも、同じような崩れ落ちそうなバンドですが、彼らはあくまでもポップソングであろうとしている。おそらく、目指す地点には60年代だったりのクラシックな名曲などがあるはずです。しかし、マヘルにはそんなものが無い。表面上ポップソング的体裁をとっているだけで、中身は全くの純粋なアート/芸術作品なのです。つまり、非常にコンセプチュアル。そんなアート特有の偏屈さが、牧歌的な楽団風の楽曲の奥底に感じられます。ちなみに、僕がマヘルの名前を知った記事には、工藤さんがメンバーに渡す楽譜には鳥やら動物の絵が描いてあることもある、という逸話が、、。実際、アルバムによっては、30分くらいピアノの即興演奏が続くようなものもあったりして。
 そんなアートな(?)マヘルなのですが、しかし、いやだからこそ彼らの奏でるポップソングというのは、ちょっと堪らない魅力があるのです。既成概念をグラグラにされて、結果的にボンヤリとその牧歌的なメロディに浸ってしまうような。ちょっと危険ですね(笑)。

b0054702_1272223.jpg で、それが一番分かりやすい形で現れてるのが、03年に出た"blues du jour(今日のブルース)"だと思います。レーベルは、ジオグラフィック/ドミノ。素敵なアルバムタイトルですね。
 やはり、牧歌的なメロディと今にも崩れ落ちそうな、或いはすでに崩れ落ちている演奏。そこに、わけの分からない日本語の唄が。「良かったね、君がぽよぽよで~」(面接の日)などと、グダグダの演奏で唄われると僕は、どうしたら良いのか分かりません(笑)。そして、そんなグダグダな演奏の中からぼんやり浮かび上がる叙情的で美しいアンサンブル。もう堪らないですね(笑)。あと、マヘルはたまにロックぽい曲もあるのですが、それが意外にもカッコいい。どこか、60年代のサイケデリックなロッカーみたいな雰囲気もあったり(?)。

 しかし、この工藤さんという人、やはり相当偏屈そう。少し前にソロ・ライヴのようなものを観たのですが、自作のヘンな発信機みたいな箱の傍らにずっと座ってるだけで、どうなるかなと思ってたら、突然なにやら飛び跳ねた後ステージから帰ったり。謎でした、、。この人と一緒にバンドとかやるのは大変そうだな、、。
 ちなみに、マヘルはメンバーとか非常に不定形みたいなのですが、よく参加しているのが、僕のここ数年のフェイヴァリットであるところのテニスコーツをはじめ、マジキック・レーベルの人達。この辺も非常に堪りません。是非。
 あと、マヘルがアメリカツアーをした時に、一緒にカーテンズというバンド(一人はディアフーフのメンバーでもある)と周って、そのライヴを収めたスプリット・アルバムが出ているのですが、それも非常に良いです。このアルバムから多くの曲をやっていて、リアルな緊張感溢れるグダグダぷり(笑)が伝わってきて、やはり堪らないものがあります。ライヴ観たいな。
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by marr_k | 2006-08-19 01:45


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