2006年 09月 01日
さて、次は何にしようかな、と結構悩みました。この流れから行ったらカンタベリー・ミュージックかなぁ、とも思ったけど、そういや僕はそんなにカンタベリー自体には思い入れが無いじゃん、と気付いたので止めます。大体あんまり詳しくない、、。『ストレンジ・デイズ』とかを読んだほうが良さそうだし。 てことで、一気に現代的な方へ。今回は、Prefuse 73関連で行きます。"Hip Hop meets electronica"とかって言われてるのかな? ジャンルで言うと、まぁそんな感じでしょう。ともかく、Prefuse 73=スコット・ヘレンだけに限らず、この周辺は良いものが本当に多いです。 と言いながら、実は僕はPrefuse 73は最初ダメだったのです。01年にwarpから出た1st"Vocal Studies + Uprock Narratives "を僕は鳴り物入りで買ったのですが、全然馴染めませんでした、、。この1stは、その後のアルバムや他のスコット・ヘレンのユニットに比べて、ヒップホップ色が強いと言えるのですが、もう僕が馴染めなかった理由は、単純にそのヒップホップ色がダメだった、というホントにダメな理由で、、。 ていうか、ヒップホップはそれこそデラソウルを始め、ずっと前から何度もチャレンジして、何度も挫けていたのです。おそらく僕がヒップホップでダメなのは、その大雑把さではないか、という風に考えています。何と言うか、非常にアメリカ的でノリノリであることを迫られるような感じ。音の強度とノリで成り立っているところというか。まぁ、完全に偏見なのでしょうが、、。実際デラソウルなどは、そんな所謂ヒップホップでないという評判で聴いてみることにしたのに、やはり、どうも馴染めず。というか、以前は黒人全般ダメだったのです。差別じゃないですよ(笑)。黒人特有の濃厚さ(?)が、ちょっと僕には、、。 で、Prefuse 73は、黒人じゃないし(笑)、エレクトロやポスト・ロック的な取り上げ方もされていたので、これは良さげじゃないか!と思ったわけです。ジャケも凄くカッコいいし。でも、全くダメでしたね、、。再生して音が鳴り始めた瞬間に、あ、ダメかも、と思ったくらい。結局、この1stは何回も聴きませんでした。凄く残念に思ったのを覚えています。 しかし、そのほんの少し後に買ったDelarosa and Asora名義の"Agony,Pt.1"というアルバム、これが本当に素晴らしかった! 僕は、これを車に乗りながら何度聴いたことか。 Prefuse 73名義の1stと同じく01年リリースで、レーベルはSchematic。こちらは、エレクトロニカになるのでしょうか、非常に不安定で柔らかい粒子の中で、ブツブツとグリッチーなリズムが跳ね上がるような感じ。ヒップホップ的な大雑把さとは全く異なる繊細で複雑なフォーマット。時折入る時間を捻じ曲げてしまうようなブリッジが堪らないです。グィーンみたいな。 今、久々にこのアルバムを聴いていますが、やはり素晴らしいですね。音質というかプロダクションは、さすがに少し前という感はあるけども。お勧めです。スコット・ヘレンは、もうこの名義を使うのを止めてしまい、この絵画のようなアブストラクトさは他の名義に引き継がれてはいるのですが、このアルバムの美しさは格別です。 スコット・ヘレンは、やっぱりスゲェなぁと思いながら、僕はPrefuse 73名義の2ndはパスしてしまいました、、。結局未だに持ってない。 しかし、Savath&Savalas名義のアルバムはしっかりゲット。こちらは、生演奏主体で、割としっかりとした曲想を持ったスペイン人の女声シンガーとのユニット。この名義でも何枚か出していますが、よく聴いたのは2ndでやはりWarpからのリリースの"Apropa't"。スペイン録音でジョン・マッケンタイアがミックスだそう。アコギをコードチェンジをするときに出る弦の掠れの音が素敵。ラテン特有の倦怠感が堪らないです。英米の音楽とは異なった譜割り/アクセントも刺激的。 そう、この名義での作品は、どこかMice Paradeと雰囲気が近いものがあります。やはり、ラテン音楽の影響を強く受け、アブストラクトなフォームから、歌ものへ向かっている感覚。本人達が知り合いかどうかは知らないけども、僕のCDラックでは、スコット・ヘレン関連とDylan Group~Mice Parade/アダム・ピアーズ関連は、隣通しに置いてあります。てことで、アダム・ピアーズについても少し。 この人は、所謂ポスト・ロックという言葉が一般的になる前からDylan Groupで、ツインドラムとビブラフォーンをメインにしたポリリズミックな音楽をやっていた人。何度かライヴを観ましたが、非常に複雑でレイヤーバリバリの音楽でありながら、この人はいかにもアメリカの大学生という感じの汚いヨレヨレのTシャツと長髪姿で、まるでパンクバンドのドラマーのように、チープな三点セットでバコバコとポリリズムや変拍子を叩くのです。僕は、本当に衝撃的でした。未だに目に焼きついていますが、全く緊張感無しでおもむろに叩き始め、凄く楽しそうに演奏する姿は、ほとんど現代音楽に近いような音楽性を、一気にポップに、或いはダンス・ミュージックにしてしまうほどでした。あぁ、僕はアダム・ピアーズに憧れてドラムを始めれば良かったのに!とヘンな後悔をしたものです。 一昨年くらいに観たMice Paradeのライヴでは、HIMのダグ・シャリンがドラムを主に叩いていたのですが、最後の何曲かでアダム・ピアーズが叩いてツインドラムになりました。彼が、おもむろにドラムセットに座るやいなや、ポリリズミックなドラムを叩き始め、それで一気に雰囲気がポップでグルーヴィーになったのでした。ダグのまるで修行僧のようなストイックなドラムも凄く良いのですが、やはりアダムは違います。難解なはずの音楽が、いきなりエンターテイメントな感じに。スゲェな、なんてカッコいいんだろう、と思ったのでした。 アダム・ピアーズ関連も様々ありますが、今の気分ではやはり最新作のコレですかね。05年のFatCatからのリリースで"Bem-Vinda Vontade"。アダム曰く『シューゲイザーmeetsトロピカリズモ』通り、ポリリズミックで細やかなグルーヴにマイブラばりの陶酔的な轟音ギター。その轟音とフラメンコ・マナーのアコギの絡み。そして、ブラジル音楽特有のサウダージ感。是非一聴を。 ちなみに、アダム・ピアーズとスコット・ヘレンは、今はなんとなく音楽性が近いような感じがありますが、人間的には結構正反対なんじゃないかな、と思ったり。神経質そうでちょっと職人気質ぽい感じがするスコットに対して、アダムは、凄いざーっとしてそう。楽天家そうだし。実際凄いお喋りらしいです(笑)。 でも、そこが音楽性にも違いとなって現れているような気がします。アダムが、どんどん情緒的な音楽へ向かっているのに対して、スコットは、構造や技法に重点を置いて、どちらかと言うと取捨選択して論理的に創っている印象があります。おそらくMice ParadeとSavath&Savalasが音楽性が似通っているのは、たまたまその道程がクロスしただけで、今後は全く違うものになっていくのではないか、と思います。 (まだ続くのだけれど、長くなりそうなので、、)
by marr_k
| 2006-09-01 03:53
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